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前回までのヌーソロジーとエニアグラムの統合のための6つの記事は、ヌーソロジーの「潜在化」の理論をさらに細かく、実際の生活レベルの事例まで説明できるようにしたものです。

この「潜在化」の理論の構造をもとに、今度は自我の克服の実践面のお話をしていきたいと思います。

今までの理論面の記事では、人間の自我の構造を客観的に外から見る視点でお話してきました。

今日は、一人ひとりの意識の中から自我を見た時にはどう見えるのかという視点で、まずは自我の克服のための課題の全体像のお話をしたいと思います。


目次:人間は3つのメガネをしている
   親子関係や社会の影響でできるメガネ
   エニアグラムタイプのメガネ
   自己他者構造のメガネ 
   まとめ 



人間は3つのメガネをしている


「人間は3つのメガネをしている」ってどういうこと?と思いますよね。

これは、人間は世界や自分を認知する際に3つのフィルターを通して見ているということです。実際、3つもメガネは耳にかからないと思いますが(笑)、そこは例えなので、まあそういうことにしてください。

人間は3つメガネをかけているんですが、それに気づいていないんです。メガネなんてしていないと思っています。しかも、それはそれぞれ色が付いています。色付きメガネです。

色はなんでもよかったのですが、3つなので色の3原色を当てます。一番外側は赤色メガネ、2番目は黄色、一番内側は青です(今は3原色はシアン、マゼンダ、イエローみたいですが、昔の単純な方を使います)。 


この3つのメガネを外側から順に外していくことが、自我の克服、自我を超えるということだと私は考えています。


親子関係や社会の影響でできるメガネ


一番外側は赤色メガネです。

これは、親子関係や社会の影響でできるものです。

「自分がわからなくなるのはなぜ?子供は白紙ではなく種」で書きましたが、親が自分の思い込みや理想を押し付けて育ててしまうと、子供はそこで得られた自分イメージを本当の自分と思い込んでしまいます。これが認知療法でいう「歪んだ信念」となり、様々な精神病理を作りだします。この「歪んだ信念」が赤色メガネです。

これはネガティブな信念ですが、ネガティブではない場合もあります。

「心理学における精神的健康」の記事で書きましたように、13〜14歳からアイデンティティの確立の課題が始まります。マーシャは、自我同一性の発達段階には「アイデンティティ拡散」「早期完了」「モラトリアム」「アイデンティティ達成」という4つの段階があるとしています。

この中の「早期完了」という状態も、この赤色メガネと言えます。

「早期完了」とは、
なんの疑問もなく両親や権威の考え方、価値観をそのまま受け入れ、それに基づいて行動している状態。
です。こうなると、この親の価値観に反することは受け入れられなくなり、親の価値観の範囲でしかものを考えられなくなってしまいます。

また、「権威主義的パーソナリティと日本の若者たち」で取り上げた「権威主義的パーソナリティ」もこの赤色メガネに入ります。

権威主義的パーソナリティとは、
権威的なものの思考や価値観をそのまま取り入れ、同一化する。そして、少数派や弱者を否定するという態度です。自分が没落しつつあるという不安を打ち消すために、権威と同一化しようとする心の働き。
です。

これらはどれも、本当の自分とは全く関係のない「作られた自分」を自分と思い込んでしまっている状態です。

3つのメガネは外側から順にしか外すことができません。

つまり、この赤色メガネをしているということは、他の2つのメガネも外せていないということなので、赤、黄、青のフィルターを通して世界を見ているということになります。色の3原色を混ぜると黒ですから、世界は真っ黒です。

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これは、自分の本当の感情や欲求、魂の声と全く隔絶された世界に生きているということです。

このブログでは、エニアグラムの判定はかなり難しいと言ってきました。その一因として、この赤色メガネをしているということがあげられます。その場合、エニアグラムタイプの影響は出て来ないか、赤色メガネの陰でネガティブに出るかという感じになるからです。

例えば、親の顔色ばかり見てきた子供は、成長後も周囲の顔色ばかり見るようになります。すると、エニアグラムを自分で見たときには「タイプ6かな」と思ったりします。でもそれはタイプ6だからではなく、親の影響で、本当のタイプは全く違ったりするのです。

「早期完了」の場合は、赤色メガネも比較的薄くてエニアグラムの影響もある程度出ていて、普通に社会に適応しているという感じになる場合が多いです。

この赤色メガネを外すには、赤色メガネがネガティブで濃い場合はカウンセリングが必要ですが、やはり自分と向き合い両親を客観的に見ること、自分の劣等感や自信のなさと向き合い現実を見ること、周囲に流されるのではなく、自分の生き方を模索することが大切になるのではないかと思います。

皆さんはどうでしょうか。両親を客観的に見ることはできますか?人間は誰でも欠点はありますよね。でも、親や権威を客観的に見ようとして、欠点は何かと考えた時、何か嫌な気持ち、これ以上考えたくないと感じるならば、この赤色メガネを外せていないかもしれません。


エニアグラムタイプのメガネ


2番目のメガネが、前回まで扱ってきたエニアグラムタイプのメガネです。黄色のメガネです。

黄色のエニアグラムのメガネと最後の青のメガネをしている状態では、人間は緑の世界に住んでいます。

このブログではエニアグラムタイプは、乳幼児期に形成された「自己イメージ」と「世界・他者イメージ」によって作られているとお話してきました。

この乳幼児期に作られた「自己イメージ」にそのまま自分を同一化し、「世界・他者イメージ」を現実の世界と他者に投影して見ている状態が、エニアグラムに支配され、コントロールされてしまう状態です。

例えば、タイプ5ならば、世界は自分を受け入れない、圧迫してくるものと捉えられます。タイプ4ならば、世界は自分を飲み込み、自分が消えてしまうと感じます。

そうなると、それは現実以上に現実で、大きな力を持ってしまうのです。そこからまた様々な精神病理が生じてきます。自分はエニアグラムの欲求・不安、感情そのものになってしまって、翻弄されるしか無くなってしまうのです。

では、このエニアグラムタイプの影響を克服するには、黄色のメガネを捨てるにはどうしたらいいのでしょうか。

それは、エニアグラムタイプをまず意識化し、それは乳幼児期に作られた幻想でしかないと理解することです。これには構造面の理解が役に立ちます。そして、怖いことを徐々に行動に移し、成功体験を増やしていくこと。すると、現実の世界と他者から「世界・他者イメージ」が、自分から「自己イメージ」が引き剥がされます。それらは自我に取り込まれ、自我の一部になり、自分の個性、能力となっていきます。

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乳幼児期の「世界・他者イメージ」を投影し、「自己イメージ」と同一化している状態           

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自我の中に「世界・他者・自己イメージ」を取り込んだ状態


エニアグラムタイプを観察する自分を作り、それは自分の幻想でしかないということを理解すると、それまでの恐怖はそれを世界に投影していただけなんだとわかります。

言葉で言うのは簡単ですが、赤色メガネを意識化して外し、黄色メガネも意識化して外す……これはカウンセリングで行うと何年もかかる大変な作業です。特に赤色メガネの濃い、ネガティブな信念が強い患者さんは尚更、生きるか死ぬかという血反吐を吐くような思いをしながらの作業となります。

そして、理論的にもエニアグラムタイプの構造を知り、他者のタイプも理解することで、黄色メガネを完全に外すことが可能となります。


自己他者構造のメガネ


最後が「自己他者構造の青いメガネ」です。これがヌーソロジーで言う「自己他者構造」を見ている世界です。青の世界ですね。

ヌーソロジーでは、この「自己他者構造」の仕組みを明らかにすることで、最後の青のメガネを取り、本当の世界と自己他者を見ることができるようになることを目指しているんです。

ヌーソロジーを理解して初めて、人間はフィルターなしの本当の世界を見ることができるんだと思うのです。それがオコツトのいう「変換人」の世界なんだと思います。

半田さんは「見ている自分」「見られている自分」「他者の視線」などとよく言いますが、赤色メガネや黄色メガネをしている状態では、同じ言葉も全く意味が違って認知されます。

黒い世界の「見ている自分」「見られている自分」、緑の世界の「見ている自分」「見られている自分」、青の世界の「見ている自分」「見られている自分」は全く違うものです。

半田さんが言う青の世界の「見ている自分」「見られている自分」という意味を認知するには、自分も青の世界にいなければなりません。

そうでなければ、頭でただ単に理解しているだけで、感覚レベルで理解することはできないと私は思っています。


まとめ


今現在、ほとんどの人は黒か黒がちょっと薄くなった灰色、濃い緑から薄い緑の世界で生きています。

青の世界で生きている人はほんの一握りで、そういう人たちはマズローのいう「自己実現レベル」にあると言えると思います。

でも、ヌーソロジーを感覚レベルで理解するには、やっぱり青の世界に行くことが必要だと思うんです。

このブログを読んでくださる方はいろんな方がいると思うのですが、赤色メガネの意識化とそれを外すことは、特にネガティブな歪んだ信念が強い場合はカウンセリングをしないと難しいです。

なので、このブログでは主にエニアグラムの意識化とそれを克服することをメインにお話していきたいと思っています。


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