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前回の記事は、大まかな自我の発達の全体像をつかむことを目的としたものでしたが、今日はさらに深く、細かい部分に入っていきたいと思います。

前回の記事でも扱った、フロイトの心理性的発達理論の中の最初の3段階である口唇期・肛門期・男根期という言葉は聞いたことある方も多いでしょう。「おっぱいを吸うから口唇期」「トイレットトレーニングをする時期だから肛門期」……そんなイメージですよね。

でも、具体的に口唇期の赤ちゃんがどんな世界で生きているのかをイメージできる方は少ないと思います。

また、エニアグラムの代表的研究者であるドン・リチャード・リソは、口唇期でエニアグラムタイプ4・5・9が形成されるとしています。しかし、具体的にどのようにこの3つのタイプが生じてくるのかは詳細には語っていません。

今日は、フロイトをベースに、トランスパーソナル心理学のケン・ウィルバーの理論(詳しくは「自我を超えた意識ってあるの?」をご覧ください)から口唇期の赤ちゃんの意識と世界観をご紹介します。そして、ここからは私個人の仮説ですが、そこに私の臨床経験も加え、口唇期にエニアグラムタイプ4・5・9がどのように生じてくるのかを具体的に明らかにしてみたいと思います。


目次:口唇期の世界
   タイプ5の世界
   タイプ4の世界
   タイプ9の世界 
   まとめ 



口唇期の世界


ウィルバーは著書「アートマン・プロジェクト」で、乳幼児の意識発達について次のように述べています。

まず、赤ちゃんは母親の胎内から生まれた後、しばらくプレローマという「主客一致」、つまり世界と一体になった状態を経験しています。そこはただ「ある」ということ以外には何もない、至福感を感じていられるアダムとイブの楽園のような状態です。

そこからだんだんと、意識が「自分」と「自分じゃないもの」という2つに分かれていきます。

これが口唇期(ウィルバーの用語では「ウロボロス」)の意識状態です。

ここでは、まだ母親はおろか「人間」さえも認識できていません。ただ断片的な「もの」を見て、「自分ではないもの」と認識しているだけです。

「自分」もまだ「身体」とは認識できず、「感覚の総合体」のようなボワっとしたものです。

自我の発達した大人から見れば、「この地球の日本という国の〜県に存在する、ある母親の胸に抱かれている赤ちゃん」という認識になりますが、口唇期の赤ちゃんからすると、世界は「自分」と「それ以外」という2つのものしかないのです。

そこでお母さんに抱っこされて安心したり、おっぱいを吸って満腹になると幸福感を感じ、「乳房」=「世界」は良いものとなり、空腹やおしめが濡れていたりするのを放っておかれると「世界」は悪いものとなります。

ウィルバーは、この時期の赤ちゃんは「すべてを飲み込みたい」という欲求と「自分が飲み込まれる」不安を持っていると言います。すべてを飲み込んで、また世界と一体化したいという欲求があるのです。

この世界と一体化したいという欲求は、自我の発達レベルによってその形を変えます。それが口唇期では「すべてを飲み込みたい」となるわけです。でも、どの発達レベルでも、形は違えど根本的には同じ力でが働きます。ウィルバーはこの力が人間の自我の発達を引っ張っていると考えます。


タイプ5の世界


このように考えた時、口唇期の「すべてを飲み込みたい」という欲求をベースにして生じるのがエニアグラムタイプ5です。

すべてを飲み込むというのは、具体的には「おっぱいを飲む」ということが大きいですが、お母さんや他の大人との一体感、安心感を感じることも入ると思っています。

心理学では、乳児は母親が不安感を持っていることがわかると言われます。お母さんの胸に抱かれて、おっぱいを飲んでいるけれども、何か嫌な気分がする、世界と一体感が持てないとなると、赤ちゃんは「飲み込みたいのに飲み込めない」という感覚を持ちます。

すると、世界は「自分を受け入れない」、「圧迫してくるもの」というイメージができます。そして、自分は「飲み込みたいのに飲み込めない」「世界に受け入れられないもの」というイメージができます。

タイプ5は、このような口唇期での「世界を飲みこもうとしたのに飲み込めない」という体験から生じるのではないかと私は考えています。

つまり、この経験からできた「自分イメージ」と「世界イメージ」が自我の基本構造となって、13〜14歳に浮上してくるのです。タイプ5はこれらのイメージを通して世界と自分を認識します。

タイプ5はこのブログでもお話ししているように、世界を1つのシステムで説明したいという強い欲求があります。これが、口唇期の「飲み込みたい」なのです。

口唇期は「自分」と「自分じゃないもの」という曖昧で抽象的な世界です。これが13〜14歳の意識には、概念や知識のレベルとして認知されます。世界を飲み込むということが、概念や知識で世界を説明する、概念や知識によって世界を自分の中に取り込むということにすり替わるのです。

そして、タイプ5は漠然とした「社会全体」というものに恐怖を持つことが多いです。これは口唇期の「自分じゃないもの」が、発達後に得られた常識を通すと「社会全体」というものに見えるということです。


タイプ4の世界


そして、「自分が飲み込まれる」不安をベースにして形成されるのがエニアグラムタイプ4です。

先ほど、ウィルバーは口唇期では「世界を飲み込みたい」欲求と「自分が飲み込まれる恐怖」が生じると言っていると書きました。

「世界を飲み込みたい」のがタイプ5ならば、「自分が飲み込まれる」恐怖を持っているのがタイプ4なのです。

口唇期の赤ちゃんは空腹やオムツが濡れているなどの不快感を放っておかれると、それを「世界が自分を飲み込んでしまう」と感じます。自分が飲みこもうとしているから、その反映としてそのように認知するわけです。

そして、「自分が消えてしまう」という恐怖が生じます。

これがタイプ4の根本を形作っています。「飲み込まれて消えそうな自分」と「自分を飲みこもうとする世界」イメージです。

このイメージは13〜14歳の成長した人間の感覚を通すと、自分が消えてしまわないように「自分の存在を感じたい」となります。

自分の存在を感じるためには「人と違う」「個性的」であることが必要になります。タイプ4は感情や感覚を自分と認識するので、感情や感覚を人一倍大切にしますし、それを抑圧されるのを嫌います。すると、感情や感覚は研ぎ澄まされ、人と違うものを求めますから、芸術家にタイプ4が多くなるのは納得ですよね。

また、タイプ4は「自分が消えてしまう」恐怖から逃れるために、人間関係の絆を求める面もあります。


タイプ9の世界


そして、口唇期の「世界との一体感」から生じるのがタイプ9です。

タイプ9は、「自分」と「自分じゃないもの」の一体感をベースに生じます。その区別が分からない状態です。

具体的には、口唇期での満足、つまり、お母さんとの一体感を強く感じたことがベースになっていると考えています。お母さんも精神的に安定していて、赤ちゃんの口唇期の欲求を満たし、「消えてしまう恐怖」もあまり感じずにいられたということではないかと思います。

「世界に受け入れられる自分」「自分を受け入れてくれる世界」というイメージです。

タイプ9は、現状維持、平和を強く求めるタイプです。今の自分がすでにそれでOKなので、それを維持することが第一となります。

他のタイプに比べて、特に何もしなくても精神的に安定していて、自分にも他者にも基本的信頼感を持っています。

ただ、問題が生じると向き合うのを嫌がり、解決を後回しにしがちです。


まとめ


口唇期の3つのタイプはそれぞれ全く違う世界観を持っていますが、共通する点もあります。それは「自分と自分じゃないもの」という抽象的で曖昧な世界観を通して外界を認知しているということです。

今日は口唇期のみの説明ですが、肛門期・男根期も同じシステムで説明できます。この3段階の具体的イメージが見えてくると、本当に人って全く違う世界に住んでいるんだなということがわかってきます。

まだこれは私の仮説でしかありませんが、このように考えるとエニアグラムもより一層わかりやすくなり、深く理解できます。タイプの特徴を覚えなくても、この構造が分かっていればそこからタイプの特徴を導き出せます。

そして、現在難しい個人のタイプ判定にも役立つのではないかと思っています。


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