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統合失調症という病気、みなさんご存知でしょうか。

以前は精神分裂病という名前でした。

普通に生活している場合、周囲に患者さんがいない限り、統合失調症がどんな病気かなんて分かりませんよね。

哲学の分野ではこの統合失調症の研究から、ドゥルーズ・ガタリによって「スキゾ」(統合失調症は英語でスキゾフレニアという)という概念が作られました。

「スキゾ」とは、主観・感情・欲求などの開放というような意味です。その方向こそが人類を救う道だという論が展開されて、日本でも80年代に「スキゾキッズ」なんて言葉が流行っていました。

現在の著名な思想家や芸術方面の方々は、このスキゾこそが希望という考え方を奥底に持っている方が多いように思います。それだけ、この統合失調症というのは人類に大きな影響力を持っているんです。

実は、この統合失調症が、エニアグラムタイプの解釈にも大きな意味を持ってきます。

エニアグラムの研究者ドン・リチャード・リソは、「性格タイプの分析」で、統合失調症はタイプ5に関係しているとしています。

でも、私の臨床経験では、統合失調症の患者さんには圧倒的にタイプ1とタイプ9の方が多いのです。

今日は、私が臨床経験から得た統合失調症とエニアグラムタイプについての仮説とリソとの解釈の違い、これまでの統合失調症の病前性格の研究とタイプ5・タイプ4との関連などについてお話してみようと思います。


目次:統合失調症とは
   統合失調症にはタイプ1とタイプ9が多い
   スキゾ・パラノとタイプ9・タイプ1
   リソの考え方とクレッチマーの分裂気質
   木村敏の分裂病研究
   ガントリップのスキゾイド論

   大陸系とアメリカ系の断絶  
  

統合失調症とは


統合失調症とは、簡単に言うと「現実見当識」(現実を認識する能力)が障害される病気です。

つまり、現実の認識が正常にできずに、自己と他者の境界が曖昧になり、他者の考えが自分に入り込んできたり、自分の考えが他者に伝わってしまうなどの幻覚・幻聴、近所の人に嫌がらせを受けているなどの被害妄想や誰かに狙われているという追跡妄想などが生じます。

これらの幻覚・幻聴・妄想などを陽性症状といいます。ここから、興奮や不安、抑うつなども生じます。

また、感情の平板化、無表情、常同的思考、発語の減少、ひきこもりなどの陰性症状と呼ばれる症状も、統合失調症の症状です。

そして、統合失調症には大きく分けて、次の3つのタイプがあります。

妄想型:30代以降に発症することが多い。幻覚・妄想がメインの症状。
    予後は比較的よいとされる。
破瓜型:10代半ばころに発症することが多く、感情の平板化、常同的思考などの
    陰性症状がメインとなる。予後は妄想型に比べよくない。
緊張型:筋肉が硬直し、興奮状態を呈する。不自然な姿勢で静止していたり、
    意味のない動作を繰り返す。


統合失調症にはタイプ1とタイプ9が多い


私は、大学生のときにエニアグラムに出会い、卒論は「エニアグラムタイプと自己実現」をテーマに面接調査をしました。もちろん、教授にはエニアグラムとは言わずに。。

その後、修士に行き、いろいろあって臨床の道に入ったわけですが、精神医学や臨床心理学の見方とともに、自分の中だけでですが常にエニアグラムを通しても患者さんの見立てを行っていました。

この臨床経験から得た発見として最も大きいのが、この統合失調症とタイプ1タイプ9の関連とタイプ4についてです(タイプ4についてはまたの機会に)。

臨床心理士のカウンセリングには統合失調症の患者さんは来ることは少ないのですが、初診面接や心理検査、診察の陪席などでお会いする機会はあります。

リソは「統合失調症はタイプ5」と書いていますが、実際はどう見てもタイプ1とタイプ9なんです。

しかも、妄想型はタイプ1、破瓜型、もしくは陰性症状はタイプ9です。

典型的な妄想型はタイプ1、陰性症状メインのタイプはタイプ9しかならないんじゃないかと思えるくらい、本当にはっきりとしたタイプがあるんです。

特に、妄想型はタイプ1w2が多い印象です。

ただ、ごく稀に、タイプ4w5やタイプ8の方を見たことがあります。

タイプ4w5の統合失調症の患者さんは、やはり妄想の内容が違います。炎が燃えているとか、神秘的な内容が多いです。

そして、タイプ8の患者さんは誇大妄想です。

つまり、統合失調症の妄想型はタイプ1、破瓜型、陰性症状がメインのタイプはタイプ9が圧倒的に多いが、極稀に他のタイプも似たような「現実見当識」の障害の症状を呈することがあるということなんだと思います。


スキゾ・パラノとタイプ9・タイプ1


私が勤めていたクリニックでは心理検査として箱庭を使用することがあるのですが、精神科医の先生が「統合失調症の患者さんは整然と規則正しく物を並べる傾向がある」と言っていました。

これは、タイプ1の特徴と重なります。タイプ1は正常な人も、テーブルの上のリモコンをきちんと並べたり、絵画の傾きを直したり、目についたものを整然と並べたくなるという傾向があります。

最初にお話したドゥルーズ・ガタリは、スキゾと対比させてパラノという概念を使います。

これは偏執病(パラノイア:妄想性パーソナリティ障害の一種)から来ているのですが、ドゥルーズ・ガタリは、パラノを客観性や論理性、言語などで世界を把握する傾向という意味で使用します。

特にこのパラノに囚われているのが、タイプ1だと私は考えています。タイプ1がパラノに囚われすぎて、限界を超えたときに、パラノが破壊されて、現実見当識が障害され、統合失調症に陥るのではないかと考えています。

一方、タイプ9はスキゾの傾向が強いタイプです。

タイプ9には中村玉緒さんとか浅田美代子さんとか天然ボケと言われる方が多いのですが、正常な場合も根っからのスキゾ性質(主観的)なんです。

そこに自我の限界までストレスが加わり、スキゾが極まったときに、現実見当識が障害され、統合失調症が発症するのではと思っています。


リソの考え方と分裂気質の研究


最初に書いたように、エニアグラムの研究者ドン・リチャード・リソは、統合失調症と対応しているのはタイプ5だとしています。

リソはなぜそのように判断したのでしょうか。

おそらく統合失調症の病前性格の研究、つまり分裂気質の研究を根拠にしているのだと思います。

去年、マツコ・デラックスさんとタイプ2の記事で、以下のように、クレッチマーの類型論のお話をしました。

これは、簡単に言えば、精神病になりやすい性格というのがあって、その性格と体型に関連があるという考え方です。

クレッチマーは次の3つのタイプがあるといいます。
(1)循環気質:社交的・親切・温厚・善良:肥満型:躁鬱病
(2)分裂気質:非社交的・神経質・控えめ:瘦せ型:分裂病
(3)粘着気質:頑固・几帳面・熱中しやすい:筋肉質:てんかん


これだけだと、分裂気質はタイプ5に加えてタイプ4にも取れそうです。

更に調べてみると、痩せ型は神経質タイプと分裂質タイプの2つに分かれるようです。

Wikipediaの分裂質の説明には
このタイプは第三者からは簡単に理解しがたい性格である。一般的に、物静かで非社交的、真面目でユーモアがないデリケートな性格で通俗的な物事を軽蔑し、自分だけの世界を作り上げ、それに熱中するタイプ。 文学美術等の芸術面に関することがらにおいて才能を発揮することが多く、貴族的なほど洗練された上品なセンスと冷酷さを持ち合わせている。 粗野で下品なことに対して極端に嫌悪感を示すのもその一端のあらわれである。 さらにこのタイプの人は観察力と分析力にすぐれ、理路整然とした物事の考え方をすることが多い。 有能な才能を持ち合わせていれば、ナンバー2、ブレーンとして力を発揮する。対人関係においては、好き嫌いがはげしく自分の世界観がわかりそうな人には興味を示すが、 第一印象で嫌なイメージを持った相手には全く興味を示すことがない。
とあります。

これを見ると、リソが分裂気質をタイプ5としたのも分かります。

前半部分はタイプ4もあり得る内容ですが、観察力と分析力、理路整然とした考え方、ナンバー2というのはタイプ5っぽいですね。


木村敏の分裂病研究


また、精神病理学の研究で著名な木村敏さんは、著書「時間と自己」の中で、

一般的に言って、分裂病親和的な人は数学者や理論物理学者、哲学者や詩人、革命理論家などに多く、実用的な科学の研究者、実務的な才能のある人、実業家や保守的な政治家などには少ないと言えるだろう。

うつ病親和的な人は、多くの場合に保守的で伝統指向的な行動様式を示すけれども、それも身近な共同体の多数規範の範囲内のことにすぎない。周囲の流れに逆らった信条的で一匹狼的な保守性や伝統指向性は、うつ病親和的な人よりもむしろ分裂病親和的な人にこそふさわしいものである。

と述べていますが、木村さんの「分裂病親和的な人」もタイプ5かタイプ4に近い概念のような気がします。

タイプ1には実務的な才能のある人も多いし(銀行員や経理など)、タイプ1とタイプ9はどちらも、周囲の流れに逆らって一匹狼的な振る舞いはほとんどしないでしょう。


ガントリップのスキゾイド論とタイプ4


統合失調症の病前性格については、他にもたくさんの研究があります。

その中で、イギリスの対象関係論の研究者ガントリップは、統合失調質の人は「愛の対象に対する怒りや憎しみが、その対象を破壊してしまうのではないか」という恐怖と、「その対象に飲み込まれてしまうのではないか」という恐怖から、人間関係から引きこもろうとすると述べています。

私のエニアグラムの構造論を読んでいただいた方はお分かりだと思いますが、これは私がタイプ4の説明でいつも言っている「自分が消えてしまう」「飲み込まれる」恐怖とまさに同じことを言っているように思います。

つまり、ガントリップは、タイプ4的な不安から統合失調症の陰性症状のような状態が生まれるのだというわけです。

このように、クレッチマーや木村敏さん、ガントリップなどの精神病理学や対象関係論の研究者は、統合失調症をタイプ4かタイプ5と関連付けて考える方が多いです。

これはどうしてなのでしょうか。

9つのタイプの中では、タイプ4とタイプ5は最も社会や常識から距離があるタイプと言えると思います。

同様に精神病理の中では、最も社会や常識と距離があるのは統合失調症です。なので、彼らはタイプ4とタイプ5が、統合失調症に至るプロセスにあるタイプだと考えたんじゃないかと私は思っています。

ガントリップが言うようにタイプ4が統合失調症になることもありますが、私の臨床経験では、統合失調症は圧倒的にタイプ1とタイプ9が多いのです。


大陸系とアメリカ系の断絶


現在は、アメリカ精神医学会が出したDSM-Ⅴという診断基準をもとに診察、そして主に薬物治療が行われています。これは、患者さんの訴えや行動の観察から、表面的に目に見える症状だけを客観的にまとめたものです。

最初に書いた統合失調の症状が何項目かで述べられています。それに何個かあてはまったら、統合失調ですよとなります。

でも、それがどのようにして発症してきているのかについては触れないのです。敢えて見ない。

それを研究するのが、精神病理学だったり精神分析だったりするのですが、それはやはり研究者の主観的な思考によって生み出されるものなので、確固たる証拠はないですよね。実際、研究者によって様々な論が展開されていますし。

哲学にも大陸系・英米系というのがあるそうですが、精神医学にも同じ大陸系=精神分析・精神病理学、アメリカ系=DSMという派閥があるんですね。

統合失調症だけを見ても分かるように、現在、この2つの間には大きな断絶があります。

私はこれを埋めるのが、エニアグラムだと思っています。